人事専門誌『HRmics』。発行の直後、誌面では紹介し切れない生の情報をお伝えする無料セミナー、HRmicsレビューを開催しています。今回も、9月27日に東京で行われた最新レビューの概要を3回にわたってお届けします。今回は、日本型グローバル採用の本当の姿に迫る、同誌編集長、海老原嗣生の講演要旨をお伝えします。執筆は同誌副編集長の荻野です。※2012/10/18の記事です。
昨今、日本企業における人事の筆頭課題として上げられるのがグローバル化。手っ取り早い方法はまず人員構成を変化させること、とばかり、外国人の採用に力を入れる企業が後を絶たない。
巷に跋扈する“常識”破壊では定評のある海老原、まずは、前回、この5月に行われた第12回HRmicsレビュー参加企業約100社へのアンケート調査結果をもとに、世間で言われている「グローバル採用」の死角に切り込んでいく。
理屈はこうだ。
「将来、外国人比率を全社の1割以上に上げたい」と考えている企業は37%あった。少なくない数字である。ただし、実際の配属先となると、限られてしまうのが現実だ。
海老原:「言葉や習慣に不安があるために、国内営業は無理。経理や人事といったスタッフ部門も社内との調整業務が多いので非現実的だ。アンケート結果もそうなっており、海外統括、海外営業、研究開発、商品企画・マーケティングが受け入れ先のトップ4だった」
次に、同じ調査で、「将来的な外国人比率」を部署ごとに聞いたところ、どこも「1割以下」と答える企業が圧倒的に多い。前記の外国人配属を多数受け入れている4部署に関しても、その傾向は変わらなかった。しかも、その4部署は人員規模が限られており、大量の人員が配置されるイメージはない。いくら4つが頑張っても、全社で1割までアップ、という目標達成はかなり難しいのは火を見るより明らかだ。
海老原:「経営者が、外国人採用を拡大するぞ、と勇ましくラッパを吹いても、人事や現場は、配属先がないから現実的ではない、と悲鳴を上げているのが現実ではないか」
だからといって、卑下する必要はまったくない。そもそも、グローバル化が進んでいるといわれる欧米企業でも、闇雲に外国人採用を行っているわけではないからだ。
彼らはもっと現実的である。特に欧米の大手企業が外国人を採用する場合、「その国の他の企業で働いた人材、その国の大学で学んだ人材、そのどちらかしか採用しない。つまり、働き方や商習慣をよく理解している人材、その国の言葉が話せる人材しか採用していない」という中島豊氏(中央大学特任教授)の話がフリップでは紹介された。
ならば、日本語が話せる留学生採用に力を入れればいいのか、といえば、そういうわけでもない。まず留学生に対する抜きがたい幻想がある。つまり、留学生というと、「上位大学に学ぶ高度技能人材」というイメージがあるが、海老原が見るところ、どうも違うようだ。
下のいくつかの表を見ていただきたい。
これを見ると、旧帝大・早慶・東工・一橋といった上位大学に在籍する留学生は全体の15%程度に過ぎないことがまずわかる。しかも、そのほとんどが大学院生であり、専攻分野は非理工系の文系・国際系、そして農学・生物などで7割以上を占めている。
さらに以下を見ていただきたい。
留学生数上位30大学のうち、偏差値40台の大学が3分の1を占めており、そうした偏差値40台の大学では院生の比率が低く、文系の学部生が9割以上と圧倒的多数を占めている。
海老原:「上位大学の留学生は非理工系の院生が多く、それ以外の留学生は下位大学の文系学部生が圧倒的。その2種類の学生は、たとえ日本人だったとしても、特に大手企業に採用されるのはかなり難しい。外国人ならさらにハードルが上がるはずだ。これが今の日本における留学生採用の現実だ」
留学生イコール優秀なグローバル人材、というわけで、手放しで採用を進めればいいわけではないということだ。
でも、データを見れば一目瞭然で、留学生の数が増えているのが今の日本社会の現実だ。その背景にあるのが、海老原いわく、質よりも量の確保を重視した、政府による「留学生30万人計画」だという。どういうことか。
海老原:「少子化の影響をもろにかぶるのが学校法人だ。特に新設の一般大学の経営は非常に苦しい。留学生30万人計画で、日本人学生の減少を留学生で補おうとしているのではないか。現に偏差値40台の新設大学では留学生比率が非常に高い」
高度技能人材とはいえない、こうした大量の「普通の文系留学生」が日本社会にあふれているわけだが、一方では彼らを上手に活用し、新たな人材育成に成功している企業が現れてもいる。 それが、流通サービス業だ。
まず、昨今では大学生のアルバイトも、割のいい塾・家庭教師・イベントなどに流れ、なかなか流通サービス業には人が集まらない。そこで、この大学生バイトとしての留学生活用が流通サービス業では浸透した。ちなみに、入管法の改正により、日本で学ぶ留学生は、学校の種別を問わず、週28時間(長期休暇中は40時間)まで就労が可能だ。
比較的言葉の壁が少ない流通サービス業は、留学生には入り込みやすい世界であり、一社で長く勤続する例が多い。2、3年も働けば現場で必要な知識を一通りマスターしてくれる。こうして育った人材の中から、本人の希望を前提に、卒業時に、「これは」と思う人材を新卒採用する。人柄と働きぶりをみての採用だから、面接だけの場合より、ミスマッチが少ない。入社後の基礎教育もかなり省くことができる。それは本人にとっても歓迎すべきことだ。つまり、自社の風土に合った即戦力の人材をピンポイントで採用できるのだ。
すでに実務は相当、マスターしているため、その後の育成は早い。20代後半で母国帰参して、幹部となるケースなどもまま生まれている。
われわれはグローバル人材というとトップ大学を卒業した、スペシャリストを想像しがちだが、もはや、留学生激増時代で、そうした学生はほんの一握りといえる。日本で暮らすわれわれにとって最も身近なのは、コンビニや飲食店で給仕している主にアジア系の留学生たちなのだ。
だったら、その活用法をうまく考えようじゃないか、という海老原の現実論、いかがだっただろうか。
最後、海老原はこんな話で結んでいる。
海老原:「そうした流通サービス業が出て行く先は伸び行くアジアだ。実は日本でつくって海外で売るという『貿易収支社会』は8年ほど前に終わっている。今では海外に設けた現地法人が直接、モノをつくり、サービスを提供し、そこから得られた利益が日本に帰ってくる『所得収支社会』になっている。流通サービス業のアジア進出が加速すれば、その流れはさらに太くなるだろう」
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