1月19日にリクルートエージェント社内で行われたレビュー。編集長、海老原嗣生による採用アセスメント論は、採用担当なら誰もが知っておくべき実務領域に入ります。今回もHRmics副編集長の荻野が報告します。※2010/02/18の記事です。
アセスメントは最初の選抜時のみに活用し、そこでスクリーニングをかけた人材を面接に送り込む、という使い方をする企業が多いが、海老原は面接で合否を判断した後に使うことも推奨する。それには2つの方法がある。
まずは、面接で不合格となった応募者の中から、「自社にぴったりな人材」を再度発掘するための“敗者復活”用であり、マッチングのためのアセスメントといえる。
もうひとつは、逆に合格と判断された応募者の中から、「入社してもらっても活躍が期待できない、本来は落とすべき人材」を見抜く“内定前検算”用であり、こちらがスクリーニングのための活用だ。
前回述べたピーク1ボトム1法と併用する形で、スクリーニング型アセスメントとマッチング型アセスメントを実施することを海老原は提案する。
「達成動機の強さ」をPeak1因子と考えた場合、その因子が弱い人のみを不合格とするのがスクリーニング型アセスメントであり、傾向の強い人のみを不合格とするのがマッチング型アセスメントである。それぞれメリット、デメリットがあるので注意が必要だ。すなわち、スクリーニング型は、傾向の弱い人を完全に除くことができる反面、傾向が弱い人のみが対象となるため、選抜効果がどうしても薄くなってしまう。一方のマッチング型は組織風土の統一性が確保でき、マネジメントや育成が容易になる反面、基準の絞り過ぎによる逸材の取り逃がしというデメリットが生じる。
着目すべき因子の合計点で決める合計得点法も、スクリーニング型アセスメントを併用すると使い勝手がぐっと増す。例えば、企業として強みにしたい因子が4つある。4因子の合計得点が社内の高業績者のそれを上回った場合、合格となる。この部分だけで考えると、マッチング型アセスメントだといえよう。でもこれには、タイプの異なる人材が混在してしまうというデメリットがあることは先述した通りだ。
そのデメリットを解消するために、スクリーニング型の要素を付け加えるのである。具体的には、各因子に最低基準得点をそれぞれ決め、合計得点レベルでは合格でも、基準点を満たさない因子がひとつでもあったら不合格とするのだ。これによって、先ほどから強調している組織風土の一貫性が保たれる、と海老原は力説した。
話はいよいよ佳境を迎え、「面接とアセスメントを連結する」というテーマに移った。海老原いわく「面接は仮説を確かめる場」なのだという。どんな意味なのか。面接時には、履歴書や職歴書、アセスメントの結果などが事前情報として面接官の前に用意されている。履歴書の中でも日本企業が最も気にするのが学歴だろう。例えば、履歴・職歴書からは「仕事ができるか」、アセスメントからは「仕事に適した性格か」、学歴からは「教養はどの程度か」という3つの仮説が導かれる。
その仮説の正否を面接で確かめるために何らかの評価軸が必要となる。例えば、「仕事」に関しては、「10人の開発チームをマネジメントできるか」、「性格」に関しては、「持続性があり安定的か」、「教養」に関しては「技術系だけでなく文科系の教養もあるか」といった評価軸が考えられる。
海老原「面接における確認作業を標準化し効率化するのが構造化面接という手法です。面接官によって評価がぶれたりするのを防ぎ、的確な評価をすばやく正確に行うための仕組みともいえるでしょう」
もう少し具体的に説明しよう。先の例でいえば、「10人の開発チームをマネジメントできるか」という能力の有無を確認するために、進捗管理力、メンバー管理力、トラブル対応力という3つの力に能力を分解するのだ。その上で、進捗管理力だったら、〔1〕資源(ヒト・モノ・カネ)の最適配分、〔2〕計画立案と業務差配、〔3〕進行管理という3つの面を5段階で評価していく。もちろん、あらかじめ5段階のレベルのすり合わせを行っておく必要がある。ここまでやると面接官による評価のぶれが出にくくなるのは間違いない。
こうした評価軸の設定に加え、投げかける質問も工夫する必要がある。理想的なのは、これまでで最も成功した仕事上の出来事と、逆に失敗した出来事を話させ、その際のキーとなるエピソードに焦点を絞り、なぜそうしたのか、どうやったのかという事実ベースのヒアリングを重ねていき、それぞれのエピソードについて、採点の目安となる表を作っておき、それに従って評価していくやり方だという。
海老原「ここまでやれれば鬼に金棒ですが、作業が膨大になり、採用にとてつもないコストが発生するため、専門の人事コンサルティング会社を除き、現場レベルではなかなか行われていないのが現状です」
アセスメントに関連して、とてつもないコストが発生してしまう例がもうひとつある。俗に言う“神様スペック”の問題である。
例えば、「アセスメントを工夫し、今の会社にはいない、思考力が抜群で行動力にも秀でたタイプを採りたい」と考える人事がいたとする。そういう人材がたくさんいる会社は確かに高業績が期待できそうだが、「半面、諸刃の剣になる可能性もある」と海老原は釘を刺す。
海老原「そういう人材は、活躍できず不遇となれば不満分子に早変わりしますし、若いうちは雑巾がけといった日本型雇用を嫌いがちなので、ある程度の自由を与え、権限委譲することが必要です。さらに、他社からも引く手あまたですから、それなりの待遇や特典を用意しないと入社は難しいですし、かといって数が多すぎると、船頭多くして船山に上る状態になりかねない。つまり、自社で扱いかねる神様のような人材を採用する際はよほど慎重になるべきなのです」
最初からスーパーな人材を採ろうとしても急がば回れになることが往々にしてある。今の時点の能力が高い人よりも、風土に適合し、役割と仕事に応じて、長期的に自分自身を変えていける人物であるかどうか。企業はそういう人をアセスメントで見抜くべきなのだろう。
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