熟年人材の転職トレンド-コツコツ地道に腕を磨く生き方の肯定

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年代を絞って見てみると、長い時間をかけて大きく変わってきたのがわかります。

年が明けた今回は、新年にちなんであたらしい切り口でお送りします。取り上げるのは「熟年世代の転職」。年代に絞ってスポットを当ててみると、こちらも長い時間をかけてずいぶん変わってきたのがわかります。レポートは、HRmics編集長の海老原です。※2012/01/12の記事です。

「働かないのに高給な熟年層」という90年代の幻想

熟年人材の転職トレンド-コツコツ地道に腕を磨く生き方の肯定

もう、90年代ははるか昔のことなのかもしれない。

特に、大手企業の熟年社員の働き方を見るたびにそう感じてしまう。

「課長島耕作」に登場する大手企業の部長たちは、各自、けっこうな接待ワクを持ち、銀座に通って夜な夜な社交にいそしんでいた。さすがにこれは劇画の世界のカリカチュアなのだろうが、現実でも余裕の会社ライフを楽しむ熟年社員は普通に見られたものだ。

当時まだ多くの企業の始業が9時だったころ、重役出勤でラッシュアワーとは無縁の生活をしていた彼ら。営業や書類作りに忙殺された若年社員の傍ら、午前中は新聞談義に花を咲かしていた彼ら。当時は、平日の接待ゴルフもそれほど珍しい風景ではなく、齢を重ねたら、あんな世界が待っているのかぁ、と不思議な気持ちになったことを思い出す。

その後、バブル崩壊、金融不況、ITバブル崩壊、リーマンショックと何度となく日本経済は叩きのめされ、企業経営はスリムかつ合理的になってきた。

そして振り返れば、熟年社員の生活は、大きく変わっている。

今回は、昨今の熟年者がどのような働き方をして、またどのような転職をしているかについて少し詳しく書いていくことにしたい。

まず、かつては大卒男子社員が大手企業で勤続を続ければ、40代後半には管理職(課長以上)になるのは至って当たり前のことだった。それが昨今ではどうだろうか。

ここにリクルートエージェントとヤフー株式会社が共同で2011年に行った調査がある。10万人のビジネスマンにアンケートを行った大規模調査なのだが、「従業員数5,000名以上、大卒、男子、転職0回」を絞り込むと、その対象数は1,273名となる。このうち課長職以上の比率は、59.3%。そう、6割を切っている。おおよそ勤続25年前後の彼らの4割以上が課長職(部下なし・専任/専門職含む)となっていない。この事実は時代の変化をよくあらわしているだろう。

一方、彼らの給料の方はどうか?こちらは賃金構造基本統計調査からデータを引っ張り出してみよう。1995年時には20代前半の社員の給料を100とした場合、50代前半の社員は288となっていた。これが2008年には、237へと51ポイントもダウンしている。しかも、そのダウンは2005年までは年平均3ポイントだったものが、以後の3年間は7ポイントと、年収ダウンのスピードが増している。このペースが続いたならば、早晩、50代の年収ピークでも若年社員の2倍にも給与はならない時代がくる。

ただし、私は過去を振り返って「昔は良かった」という気など毛頭ない。いや、誰もが管理職になれて、誰もが高給をもらえるという仕組みの方がおかしかった。

今の方がよほど正常なのだろう。

最先端や華やかな知的ワークよりも「その道の熟練者」

熟年者の転職を専門にサポートして11年となる、キャリアアドバイザーの柴田は、以下のように語る。

「年功序列でポジションアップする時代が終わり、コツコツ地道に一生働く人が増えた。熟年層でも、自分の得意領域で今でも役職につかず、現役として働いている人の相談が増えました。確かに、系列の子会社に出向して役職アップできるケースなどは見かけます。しかし、子会社出向しても働きがよくないと帰参させられるパターンも多い。だから、出向したとしても、実務者として働かざるを得ない状況なのでしょう」。

大手企業のミドルが総じて働くようになった、というのが彼の実感といえるだろう。

熟年なのに、役職も上がらず、地道に仕事を続ける彼らは、転職市場でどのように評価されるのか、も柴田に語ってもらおう。

「役職にアグラをかかずに経験を積んだその腕前は、物の熟練といえるレベルの人も多くなっています。そうした部分を評価してくれる企業が増えているのも事実です。彼らを迎え入れる中堅・中小企業の側も、大手の熟年人材の変化を理解してくれるケースが増えていますね」。

では、実際にどのような人材だと転職が決まり易いのか? 一見華やかな、マーケティングや事業プランニングなどのスペシャリティあふれる領域の人が売れ線と勘違いしそうだが、現実は大きく異なるという。

「熟年人材の多くは、先端とかハイテクという領域とは無縁の人が多い。それよりも、コツコツやってきた自分の領域に対して、“そう、それを探していたんだよ”という企業が声をかける、というケースが多いと感じています」。

たとえば、マレーシアで現地の学校を回り、製造スタッフの採用を行っていた、というような採用スタッフ。彼らに対して、マレーシア工場を立ち上げたいという会社が声をかけるようなケース。

こんなケースでも、『マレーシア進出のプランニングをしていた』とか『ASEAN事業目論見書を作っていた』といったスタッフには声はかからず、前述のような高校回りをしていた実務者の方が人気が高くなる。そう、企画系のスマートな仕事は、たいていの場合、現状の社内スタッフでできてしまうものであり、もし社内でできなくとも、コンサル会社に頼めば解決する。それよりも、実際に汗を掻く汚れ仕事は、現実を知っている人間しかできない。そういうタイプがうまくマッチングすると、入社へとつながるのだ。

別にそれはある職種に限ったことではないという。

たとえば、大手家電メーカーが医療機器業界に進出するケースが増えているが、そこで、長年同業界にて営業をしていた人に白羽の矢が当たるケース。国際会計畑が長く「生涯一経理マン」と自負していた40代の経理スタッフが、大手企業にIFRS担当として転職したケース。40代でも新規営業部隊を率いて若手指導をしてきた営業リーダーが、組織営業のできていない新興企業に管理職として転職したケース。その他、樹脂金型設計や染織などエンジニアと匠の中間的な職人肌のスタッフ…。

「かつての熟年人材ニーズは、社長の側近として参謀となるような人や、仕組みづくり・制度づくりに長けた人、新たなビジネスを考えられるようなキレ者といった、デキル人がその主役でした。そうしたケースは今でも少なくはないですが、前述したとおり、昨今はこれに、“コツコツ型の実務に超明るい人”が個別散発的なマッチングで決まることが多くなっているといえるでしょう」。(柴田)

600万円での企業と求職者の歩み寄り

ただし、こうしたコツコツ型の転職の場合、年収に関して相当の譲歩が必要になるケースが多いようだ。この点について、柴田同様、熟年求職者を担当している石川はこう語る。

「コツコツやってきた領域に、たまたま時代が注目したようなケースでは、けっこうニーズも集中し、それなりの条件で転職ができたりすることもあります。少し前の中国工場経験者などがその例となるでしょう。ただ、こうしたケースは多くはありません。確かに、コツコツ型人材はマジメに頑張るのでどの会社でも力を発揮できる確率は高く、入社後にうまくいく人は多い。ただ、いかんせん、ピッタリの領域を募集する企業が少ない。そのため、年収ダウンや勤務地の遠さも覚悟し、しかも、『経験は活かせるが、多少領域が異なる』分野もOKとするような譲歩が必要となるでしょう」。

たとえば、年収で言うならば、「600万円でOKといえるかどうか、が一つの目安」(石川)という。

大手にいた人なら相当なダウン。それでも生活設計できれば十分暮らせる。求職者は、生活設計を見直して、600万円で生きていく覚悟をすること。そうすれば、地道にコツコツやってきた人に対して、社会は決して裏切らないということか。

一方、中堅中小だと管理職でも500万円年収の場合が多い。企業の側からすると、「600万円」でも年収は十分に高く、そのうえ定年まで期間の短い人を採用することに、二の足を踏むかもしれない。ただ、「若くてポテンシャルがあり、将来トップを目指す人」といったなかなか実現できないような人材要件を捨て、あと100万円年収を出す覚悟を決めさえすれば、実務バリバリで、今困っている経営課題が解決可能となる。そのふん切りをつける企業が、これからもっと増えていくのではないか。


とかく、日本は社員に「上」を目指すことを強要しすぎてきたのではないか?誰もが役職者になんかなれなくったっていい。出世せず、地道に目の前のことをコツコツ行う。そんな生き方を“草食系”だなんて揶揄する風潮こそ正すべきだろう。

実は、西ヨーロッパ諸国の50代は平均勤続が20年を超える。英米でも15年に迫る。彼らは、それほど転職などせず、コツコツとヒラで働く人が多い。

日本のように、みな管理職にすることが間違いだろう。

年収は600万円上限。腕前は熟練。ならば、雇う企業もいくらでもある。そんな生き方がこれからのスタンダードになりはしないだろうか?

それでも夫婦で働けば、世帯年収は700万を超える。この金額までなら子供手当がフル支給されて、社会保険料や税金もきわめて負担額が少ない。自治体によっては給食費が無料になったりもする。年収1000万円の世帯と、生活はそれほど変わらないはずだから。

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