元公務員。こんな人が、こんな分野で活躍できる

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民間で活躍できる公務員の資質や適任の仕事などを見ていきます。

公務員制度改革の中身と採用市場への影響を探るレポート、第2弾である。まずは若手国家公務員の退職データから見て行きたい(HRmics 副編集長 荻野)。※2010/09/16の記事です。

高まる若手の辞職率

実際、若手公務員はどのくらいの数、辞めているのだろう。図表1は、(霞ヶ関で働く官僚がまさにそうだが)「行政職俸給表(一)」という給与テーブルが適用される国家公務員のうち、20代前半および後半に属する在職者および辞職者数の、2004年から2008年まで、5年間の推移である(参照できる最新の統計が2008年のもの)。20代前半もそうだが、特に20代後半の場合、年々退職者が増え、その数は5年間で2倍にもなっている。

国家公務員(行政職俸給表(一)適用職員)の在職者数・辞職者数の図

表にある通り、在職者数は一定ではないので、退職の実態がやや分かりにくい。そこで、退職率(=年度ごとの退職者数を、退職者と在職者を足した数で割り、百分率計算したもの)の推移も算出してみたのが図表2だ。どちらの年代も、2004年は2%台だったが、2008年は5%台に達している。リーマン・ショックが2008年秋であり、採用市場も悪化したため、2009年、2010年は率が改善されたかもしれないが、いずれにせよ、国家公務員という超安定のブランド職種を数年でなげうってしまう若手が増えていることがデータからうかがえる。

国家公務員(行政職俸給表(一)適用職員)の辞職率(%)の図

公務員の具体的な転進先

公務員は辞めたらどこに行くのか。自身も厚生労働省出身で、現在は兵庫県立大学院准教授として、公務員制度改革にも詳しい中野雅至氏は、特に国家公務員の転進先として、次の9つをあげる。

すなわち、[1]大学教員、[2]経営コンサルタント、[3]シンクタンク研究員、[4]政治家、[5]自営業、[6]民間企業、[7]法曹分野(ロースクール進学・司法試験受験のための退職を含む)、[8]起業家、[9]職務と関連した民間企業や非営利法人への天下り、である(中野雅至・著『公務員の「壁」』洋泉社)。

[6]に関して、今から10年ほど前、海外の大学院でMBAなどを取得した若手官僚が、帰国後、数年で辞めるケースが続出。1998年から2002年までの5年間に留学した職員506人のうち、2005年7月時点で、53人が離職していた。実に1割強である!研修の一環としての留学であり、費用はもちろん国費である。転進先は外資のコンサルティングファームなどが多かった。

これに対して、「税金の無駄遣いだ」という批判が世間からおこり、2006年6月、政府は「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」を成立させた。留学終了後5年以内に退職する国家公務員に、在職年数に応じて留学費用の返還(一部または全額)を義務づけるという内容である。

その甲斐あってか、留学直後の退職者数は2006年に1人まで減ったが、最近はまた増えてきて、2008年は3人、2009年には6人。もっとも、外資系コンサルティングファームのなかには、留学費用支払いの肩代わりや、融資機関の斡旋をしてくれるところもあるらしい。

外部への転進問題、当のお役所内部ではどう認識されているだろうか。人事院の某・人材局長によると、「公務外で活躍できる公務員」は以下5つにタイプ分けできる。

  1. 1、リーダーシップ人材:公務員の中でも優秀な人たちで、民間企業の経営者になれるタイプ
  2. 2、専門分野関連型人材:金融、税務、各産業関連などに詳しい。コンサルタントとして活躍できる
  3. 3、専門知識・実務教育型人材:公正取引関係、環境、行政政策に詳しい。専門職大学院の教員ができる
  4. 4、公務経験活用型人材:行政法人や公益法人など準公務分野への転進が可能な人たちだが、天下りに厳しい目が注がれる昨今、旗色が悪い
  5. 5、組織運営実務型人材:実直で真面目な公務員のイメージそのままの人たち。中小企業やNPO法人などで腕を振るえるタイプ。給料の多寡を問題にしなければ、こうした需要は結構ある

民間企業でもやっていける人材といえば1・2そして5あたりだろう。

どんな仕事が適任なのか

旧・文部省出身の元官僚、山本直治氏が主宰する、「役人廃業.com」という公務員向けの転職情報サイトがある。氏によれば、民間企業で、公務員の経験や能力がすぐに生かせる仕事が2つある。

ひとつは役所や自治体向けの公共営業という分野である。たとえば、IT企業が電子政府関連の仕事を取りに行く場合、役所の仕組みや役人の気質に通じた元・公務員がいると心強い。顧客が政府や自治体というゼネコンや防衛産業においても、そういう存在は貴重だ。

もうひとつは渉外の仕事である。たとえば、新薬の開発や情報通信などの分野で、企業活動がしやすくなるように規制緩和や公的助成を求めていくもので、アメリカでいうロビイングという活動に近い。

しかし、こうした仕事に就くと、天下りOBでもない限り元の職場に対して自分が卑屈な立場に立たされる上、世間からは癒着と批判されかねないデメリットが大きいという。公務員経験を生かせる仕事には違いないが、若手・中堅公務員が安定した地位を捨ててわざわざ自発的に転職するほどの魅力はなく、むしろ非自発的転職者たる天下りOBにこそ最もマッチする役回りとなっていた。

山本氏いわく、一般的な公務員の短所は、専門能力に欠けること。もともとゼネラリスト育成が役所の人材育成の基本にあり、民間との癒着防止のためにも、ひとつの仕事を担当するのはせいぜい3年、辞令一本でどこでも動くのが習い性だからだ。

また、役所は完全に縦割り組織で、仕事領域が明確に区分されている。経済産業省のように「攻めの姿勢」で仕事をする官庁もないではないが、地方出先機関でルーチンワークをこなす職員は特に、仕事は自ら作るものという気概に欠け、仕事は上から降ってくるもの、と考えている人たちが多く、「それは私のやるべき仕事ではない」という押し付け合いも起こりやすい。これを「消極的権限争い」というのだそうだ。

逆に長所は、筆記試験を潜り抜けて入ってきた人たちだから、知的能力が高く、本来は真面目、という点がまずひとつ。また、役所の仕事というのは調整につぐ調整というものが多い。役所の内外問わず、色々な人たちの顔を立てながら動かしていかなければならないので、調整力とバランス感覚が鍛えられている。

何も取り得のないゼネラリストはともかく、人情の機微に通じた調整役はどんな組織にも必要ではないか。公務員は民間に向かないと最初から切り捨てず、前向きに考えたほうがよい場合もあるはずだ。

公から民への転進者が増える一方で、民から公への移動も増やしていく。こうした相互転進のパイプを太くすることが、真の意味の公務員制度改革につながるかもしれない。

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