派遣法改正が次期国会に持ち越され、その行方はまだはっきりとは見えていません。事務や製造に関しては当初案よりも規制が緩やかになりそうな状況ですが、対して規制強化が決定的なのが、2か月以内の短期派遣。こちらは、一部例外をのぞいて、法律施行後、半年を持って禁止となりそうです。さあ、ではどうするか?実はそのヒントとなるエポックがアメリカで生まれているとのこと。早速、HRmics編集長/海老原のレポートでお送りします。※2010/09/02の記事です。
派遣法改正で2か月以内の派遣が全面禁止された場合、どのような混乱が起きるだろうか?ここでは主に企業側の立場から、考えていきたい。
民間労働者派遣事業報告書によれば、現在の短期派遣は、「1か月以内の契約」を指すことになっている。この数が常用雇用換算で2008年は9万3000名だった。今回の法改正の対象となるのは「2か月以内の契約」と従来よりも範囲が拡大する。とすると、従事者は、10万の大台をゆうに超えることになるだろう。
法改正後、半年で短期派遣が全面禁止となると10万を超える短期派遣者はどうすることになるのか?
政府の想定では、短期派遣事業の役割は「職業紹介業(=転職エージェント)」に移管され、ここから紹介された人々が、企業と「短期アルバイター」として直接契約するという形で、今までと変化なく対応できる、ということになっている。
この、あまりにも現実を無視した絵空事に、業界関係者は憤りを通り越して、呆れることしかない状況だ。
政府は、派遣のサービスとは、「職業紹介する」だけと考えているのだろうか?ことはそれほど単純ではない。
派遣後の契約管理・人件費管理・労務管理などがすべてパックとなって提供される。この部分をどうするのか、と問いたい。たぶん、「それは直接雇用だから、企業側がやるべきだ」と政府は言うだろう。ところがこれが難しい。
細々とした短期ワーカーを多地域・多部署で雇うと、企業側は管理ができなくなる。そこで、戦前の(悪名高き)工場法に始まり、現在の派遣法まで、こうした領域に労働者供給事業を認め、派遣元が一括管理をする手法をとってきた。
なぜ、こまごまとした管理ができないのか?
これを、具体的な事例でお話することにしよう。
短期雇用は、催事や繁忙期などで一時的に大量雇用する必要がある。たとえば、参議院の選挙で各政党の事務所が短期アルバイターを雇ったとしよう。日本全国、47都道府県に500近くの事務所がある。ここにウグイス嬢や事務員、運動員を数人ずつ雇うと、選挙期間の3週間に臨時雇用の総数は1000名を超える。
仮に、各事務所が個々にこうした短期アルバイターを雇った場合、政党本部では、いったい、どれだけの人が今、どこに雇われているか、全く見当がつかなくなってしまう。こうした状態だと、途中退職者の補充や、契約期限切れした人の延長、もしくはコンプラ問題、人件費総額の試算など、実務上でさまざまな問題が発生するだろう。
こうした問題が起きないためには、政党本部で一括採用するしかないが、日本全国津々浦々の事務所人員を東京本部でまとめて面倒見るということは、できるわけなどない。
こうした、事務的な問題にまず真っ先に行き当たる。
次に、労務管理。派遣スタッフについては、個別に雇用契約を結び、それを管理しなければならない。そして、勤務前日には、「明日の勤務場所の地図」を各人にメールで送り、当日の朝には「モーニングコール」をかけ、待ち合わせをして事務所までアテンドする、というサービスを派遣は負っている。こうしたきめ細かなサービス抜きに、短期単発の業務スタッフを使用するというのは、けっこう難しいのだ。
そして3つ目。タイムカード管理や勤怠管理はどうするか?各事務所でまとめて、それぞれのタイムカードを管理し、そして給与計算をして、各自に支払うのか?社会保険はどうする?少なくとも労災保険の対象とはなる。この分を誰がどう計算する?
どうだろう、契約管理・人件費管理・給与支払い・保険計算・勤怠管理、派遣サービスの場合、派遣スタッフに対して、彼らが問題なく働けるようにこうした管理・サポートを行っている。つまり「人を集めて、企業に送ったらおしまい」というだけのサービスではない。
こうした付加サービスは、誰が請け負うのか。政府の想定は相変わらず大甘だと言わざるを得ない。
そんな五里霧中の中、ヒントとなるようなエポックがアメリカで生まれている。この「派遣が行っていた付加サービス」を、ITとWebの組み合わせで無人化していく、というクラウド・ソーシングという仕組みが彼の地ではすでに浸透しているというのだ。
概略は以下のような概念だ。
このサービスを利用企業の側から概略すれば、
これを持って、派遣サービスの相当部分が代替可能となっていく。
旧来の短期派遣(1か月未満)の事業規模は約1500億円と推定されていた。ここに新たに2か月未満の短期派遣も加われば、短期派遣代替ニーズは、潜在的に2500億円程度と推測できる。さらに、もともと短期アルバイターで対応していた領域にもこの仕組みは利用できるだろう。そうすると、総人件費ベースで3000~5000億円程度の潜在市場が見込まれる。アメリカの場合、この領域はWeb2.0で半ば無人化された営業となっているが、日本型の人材ビジネスのように、営業・サポートなどをきめ細かに「人」が行えば、爆発的に伸長する新サービスとなる、と予想される。
ちなみに、アメリカではこのサイトで管理されるスタッフ人件費のうち、8%がサイトに落ち、また、初期登録費やマッチング費、応募喚起費などの別途Feeが付加的に請求される仕組みとなっている。つまり、仮に人件費5000億円分のニーズが取り込めた場合、その8%が労務管理Fee、他に負荷サービスを合わせて、500~600億円程度のFeeが見込める市場が形成されることになるだろう。
短期派遣禁止は、思わぬ新ビジネスを生み出すことになるのだろうか?
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