なぜ若者は3年で辞めるのか?

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厚生労働省のデータから、若者の離職率についてみていきます。

厚生労働省が昨年10月に発表した新規学卒者の離職状況は、かなり詳細まで盛り込まれた有意義なデータでした。従来の全体数字だけでなく、産業別・企業規模別数字までそろっており、それを詳細に見ていくと、今まで以上に若年雇用に関する問題が浮き彫りとなってきました。この数字から何が見えてくるのでしょうか。データ分析とレポートを、HRmics編集長、海老原嗣生が行います。※2013/03/07の記事です。

就職数は前年~前々年の景況と強い相関

今回の発表は、実に分析しがいのあるデータだった。なぜなら、離職数と離職率の割り返しで、就職数もわかる構造だからだ。これに景況(景気動向指数=CI)を掛け合わせて、大卒者の総合的な就職と離職の状況を見ていこう。

まず、景気と就職はどのような関係にあるのか。好景気の時ほど就職数が増えるというのは図表1からも肉眼で見てとれるだろう。

図表1:景況と就職数

これを相関状況で調べてみたのが図表2となる。

図表2:景況と就職数の相関関数

1987年~2011年までの25年間をデータで見ると、就職数は前年度景況と0.58、前々年景況とは0.56とやや強めの相関を示す。ただし、この25年の期間のうち、前半は大学生の数自体が急増した時期でもあり、そのため、景況が悪くとも卒業生の増加に伴い就職数が増えるトレンドが重なり、結果、相関が見えづらくなっている。そこで、学生数の増加が緩んだ2000年以降で相関を取り直すと、前年景況とは0.71、前々年景況とは0.64とかなり強い相関となる。

ただ、当年度CI値とは0.3程度の弱い相関しか見られていない。新卒採用は入社の1年前に決まる側面が強く、その採用ワクは前々年の秋口に決まるため、相関は当年CI値<前々年CI値<前年CI値となるのだろう。

「景気が良いから離職」ではなく、「不本意就職だから離職」

次に、離職率を見てみよう。

3年経過後の離職率を長期的に見ると、かなり上下にぶれているのが見てとれる(図表3)。

図表3:大卒就職者の3年離職率

この理由としては、「不況期の就職者は、不本意な企業を選択している可能性が高く、そのため、好景気になって若年中途採用が増えると、条件の良い企業に転職する」と言われている。好況期採用はこの逆で、条件の良い企業に入社できている可能性が高く、その後の不況期は若年中途採用が減るので、離職率が下がることになる。

さて、この状況が正しいかどうか、3年離職率と説明要素の相関を調べたのが図表4となる。

図表4:3年離職率と景況・就職数

まず、当年の景況とは0.21とうっすらとしか関係性は認められない。好況になると転職する、という話はあまり当を得ていないといえるだろう。それよりも、前々年CI値、前年CI値、就職数とは強い逆相関数値を示す。不況期に就職活動をした人たちは、転職をする、という要素が非常に強いことがわかる。

つまり、不況期就職者は、不本意就労の割合が高く、彼らは、その環境に納得いかない点があるから、辞めるのであり、「好況になって良い転職先が増えたから」離職するわけではないといえるだろう。プル(求人)ではなく、プッシュ(現企業への不満)が若年転職の理由として浮かびあがりそうだ。

不況期、好況期に採用が難しい業界に学生が流れる

さて、では不本意就労とはどのような状況を指すのか?

これを、企業規模と産業別の就職数と景況の相関から調べていきたい。

まず、企業規模別の就職数シェアと景況の関連を見ると、従業員500人未満のいずれの企業群も、景況や就職数と逆相関の関係にあることがわかる。特に、就職数との逆相関は明白で、就職数が増える(就職市場が活況)だと、小規模法人の採用シェアが減少することがよくわかる。

とりわけ、100人未満の企業群だと就職数とは-0.79~0.94の強い反比例関係がある。500人以上の企業はこの逆で、景気や就職数と強い相関を示す。そして、3年離職率も企業規模ときれいな逆相関となり、規模が小さくなればなるほど高まる(図表5)。

つまり、不況期は不本意ながら小規模法人に就職して、その結果、彼らが転職をするため、3年離職率が高まるという傾向が見てとれる。

図表5:景況・就職数と企業規模別採用シェアの相関

続いて、産業別傾向を見ていきたい。こちらも、就職数との関係で、採用シェアの増減を見てみると、教育・学習支援、建設、小売、医療・福祉、宿泊・飲食、生活関連の6業種が、就職数と強めの逆相関にあることがわかる(これらの業種は、就職が厳しい時期に、採用シェアを伸ばす)。

図表6:景況・就職数と産業別採用シェアの相関

そのうち、建設を除く5業界で3年離職率が4割を超える(建設とて32.5%で決して低いとは言えない)。逆に、就職数と相関関係にある業種で、離職率が4割を超えるのは不動産・物品賃貸のみ。基本的に、不況期は好況期では採用が難しい業界が採用シェアを伸ばし、こうした業界の多くが高離職率なため、その後の3年離職率が高まる、ということだろう。

こうして見てくると、やはり、「好景気になったから、条件の良い求人が増えて離職率が上がる」というよりも、「不況時に離職率の高い業界に就職したため、3年離職率が上がる」という側面が強いといえるだろう。

勤続年数とともに離職率は改善するか?

さて、今度は1年目と3年目の離職率を比べて、勤務期間の長短により、離職率がどう変わるか、を見ていこう。

まず、加工をしない在籍年数別離職率を見れば、どの年度をとっても1年目>2年目>3年目となっている(図表7)。

図表7:在籍年数別離職率

ただし、この数字はうのみにできない。なぜなら、2年目・3年目は、途中で離職した人が抜けて母数が減ったことによって、そもそも率が低下するからだ。この影響を取り除き、勤続者ベースでの離職率を出したのが「(実)離職率」となる(図表8)。この表で見る限り、3年目離職率はそれほど改善せず、1年目離職率の8割程度で高止まりすることがわかる。

図表8:勤続者ベースで見た(実)離職率

この状況を、産業別、規模別で調べたものが図表9、図表10となる。

図表9:産業別に見た、初年度離職率と3年目離職率の関係

図表10:企業規模別にみた、初年度離職率と3年目離職率の関係

図表からは、初年度に離職率が高い産業・規模の企業は、3年目も離職率が高いことが見てとれるだろう。1年目離職率と3年目離職率の相関係数を取ると、規模別では0.998、産業別で0.938といずれも強烈に高い相関関係を示した。つまり、「1年我慢すれば、定着する」というのはかなり疑問がもたれる考え方であり、「1年目に離職が起きる企業は、3年たってもやはり離職率が高止まりする」と考える方が正しいといえるだろう。

産業別・規模別のデータは2003年までしか公表されていないが、各年次で見てもこの傾向は強く、これは直近の「若者の傾向」とは言えない。要するに、入口で不本意な就職をしてしまった場合、それは1~2年勤務して職場や仕事に慣れたとしても、やはり高確率で離職をする可能性が高いといえる。

採用側の視点に置き換えていうならば、けっきょく、自社とマッチしない応募者を採用した場合、すぐに辞めなくてもどこかで離職してしまう可能性が高い、となるだろう。それを是として大量採用・大量離職を続ける企業もあるだろうが、それよりも、きっちりと自社に合う人材を採り、丁寧に育てていくことに力を注ぐべきではないだろうか。

次回は、こうした入口での不本意就労を防ぐための方策について考えてみたい。

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