広告業界-外資系人材は引く手数多?国内大手経験者は?

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広告業界も、キャリアの流動性が高まり、生き方に多様性が生まれています。

今回は久しぶりに広告業界にスポットを当てています。広告宣伝費削減で大手新聞社の扱い広告料が10年前の半減!という景気の悪い話が聞かれる一方、インターネット媒体の隆盛や外資系広告代理店の参入など、一方では上げ潮ムードも感じられます。その状況をHRmics編集長の海老原は、どう見ているのでしょうか?※2012/03/15の記事です。

終身雇用中心業界で契約社員での中途採用が進行

広告代理店業界でも中途採用が盛んになっている。もともと、終身雇用・年功序列が浸透していたこの業界に、この数年どうして変化が生まれたのか?

一つには、他業界同様、リーマン・ショックと大震災のダブルパンチでクライアントの広告出稿量が低迷し、そのあおりを受けて業績悪化に悩んだ各社が減員を行ったことがある。

もう一つは、インターネット上での広告出稿が急増し、過去の紙・電波媒体経験者とは異なるタイプの人材が必要になったこと。

そして、不況や震災だけでなく、ここ十数年、クライアントの広告に対する要望が厳しくなる一方、財布のひもが固く絞められたため、費用対効果やコンバージョンレート(サイト訪問者の中で、資料請求、会員登録、商品購入など、運営者の利益につながる行動をとった人の割合)などのマーケティングデータを基にした科学的アプローチが重要視され、経験やコネクションなどの「年功」要素がはがれおちてきたこと。

さらに言えば、こんな環境変化にグローバリゼーションが加わり、海外企業が多数進出してきた流れに乗じて外資系広告代理店の参入が加速し、業界内の慣習にくさびが打ち込まれたといった諸事情もあるだろう。

ただし、中途採用が盛んになったと言っても、その多くは契約社員が入口となっている。最初から正社員採用する企業は、大手企業では国内・外資系ともに非常に少ない。自社の業務委託社員や非正規社員などを対象とした登用目的の例外的ケースがほとんどだ。では、中途で契約社員として採用された場合、どのようなキャリアを歩むことになるのか?

外資系の場合は、1年程度の考査期間を経て、能力・人物に問題がないとわかった場合、正社員として正式雇用されるケースが多い。国内系はその逆で、契約期間に上限を設けており、その上限(3~5年)に達した場合、ほとんどが契約終了となり、正社員登用される比率は極めて少ない。

外資はなぜ国内大手出身者を採らないのか

この理由を探る前に、まずは、外資系と国内系の採用トレンドを見ておこう。

まず、現在、中途採用実績が大きい外資系広告代理店の場合、国内大手総合代理店の経験者は好まれない傾向がある。彼らが欲するのは、一に外資系の大手同業、二に外資系の中小エージェント、三にインターネットに特化した国内大手代理店といった具合だ。国内大手で採用されるのは、国際部門所属の、英語ができて、外資系クライアントにアレルギーがない人が少数、といったところだろう。

なぜこうなったか?

広告業界自体が縮小傾向であり、そこにプレイヤーとして外資系が加わり過当競争のきらいがあるからだ。企業はもう、かつての「任せたよ」的な発注はせず、コスト管理、費用対効果に厳しい。そのため、マーケティングデータに強い人(外資大手)、多媒体の経験があり小回りが利く人(外資中小)、業界専門性が高い人(国内ネット系大手)を採用する。これが理由といえるだろう。

ではなぜ彼らは、国内大手は採らないのか?

その理由は、「スキル不足」というような類の言葉で語られることが多い。

ただし、この言葉は額面通りに受け取るべきではないだろう。

人材の育て方が異なる国内大手と外資

実は、外資系が国内大手代理店出身者をあまり評価しない理由も、国内大手代理店が中途採用の契約社員を正社員に登用しない理由も、根源的な部分では同じなのだ。

それは人材に対する育て方が180度異なるということに他ならない。

外資系は、どこかの分野に特化したプロを作り、戦力化して業績に寄与できるように育てる。そのため、若いうちから前線に立たされる。多くは最初に担当した業界に詳しくなっていく。ただし、その他の業界や、社内の他の職務、たとえば、媒体窓口業務や、制作工程などを経験する機会はない。そのため、汎用性は効かず、どこかに尖ったキャリアとなっていく。

一方、国内大手は、その逆。

入社直後から媒体窓口担当となったりして、新聞社やテレビ局と頻繁にやりとりし、向こう側の事情を理解する機会も与えられ、人脈形成も進む。一部の大手では、制作部門へのローテーションを持つ会社もあり、クリエイターの作法や心情なども、その時にしっかり知ることができる。だから、クリエイターとの連携も無理がなくなる。さらに、若いうちは業界を超えた担当の異動もあるため、いくつか得意領域ができていく。

ただ、こうした感じで20代が終わってしまうため、若年の段階ではどこかの業界に特化したプロとはならない。

おわかりだろうか?20代でどこかの専門分野のプロになれる外資と、キャリアの広い裾野を形成する国内大手との違い。だから即戦力重視の外資系は、大手出身者を採らないだけなのだ。

将来幹部候補になるか、スペシャリストとして最前線に立つか

ただ一方、30代後半になったとき、国内大手の広告マンは、媒体とのリレーションに長けており、制作対応もうまく、複数の業界に詳しいため、部分最適ではない全体最適な事業運営ができる人材に育っている。そうなれば、幹部にもなれる。だから、国内大手はこうした「幹部候補」色の強い正社員を人員削減の対象とはしない。新卒採用された彼ら向けの早期退職制度(勧奨退職)でさえ、その対象年齢は55歳だったりする。正社員はあくまでも、幹部候補なのだ。

一方、どこかの分野に詳しいスペシャリスト系人材は、他業界の担当へと移ることも難しいため、担当する業界が不況になると職を失いやすい。また、幹部人材となると、自分の詳しい業界に対しては肩入れするが、他業界や他職務はわからないため、全体最適な事業運営が難しくなる。つまり、一生スペシャリストとして生きることには向くが、幹部候補人材とはなりにくい。

とどのつまり、将来を考えた場合、スペシャリストとして現場で生きるか、幹部を目指すか、その差である。

ここまで読むと、国内大手がなぜ契約社員を採用していて、彼らをなかなか正社員登用しないか、がわかるだろう。

彼らの多くは外資系も経験し、主に特定分野に非常に強いスペシャリティを持っている。ある分野で業績を上げたいと思えば、彼らを雇用するのが近道だろう。他方、他業務・他業界に詳しい「幹部候補」ではないため、いくら高い業績をあげても、なかなか正社員としての基準には見合わない。そのため、年限がくれば退職することになる。

二つの人生観の相克

さて、少し整理してみよう。

かつて業界は、国内大手代理店が牛耳り、そこには終身雇用的な風土が広まっていた。そのため、中小代理店や専属代理店に入社した場合、業界大手への転入は厳しく、そのため中小媒体のみに詳しい広告スタッフとしてキャリアを閉じることが普通だった。

それが今は、国内中小→外資中小→外資大手(契約社員)→国内大手(契約社員)と動くことができ、それとともに扱い額も増え、大物媒体(テレビや大きなイベント)も担当が可能となった。

そうした意味では、キャリアの流動性は高まっている。

ただ、国内大手に移るも、基本は契約社員。ということで、常に、「安住できる」身分とはならない。そこで、彼らが最終的に目指すのは、長年担当して詳しくなった業界のクライアントにマーケ・広宣担当として入社すること。

もちろんその場合も、入社後は広告宣伝の専門家であり、しかも社内には人脈もなく、他部署の仕事内容もわからない、という、いわゆる「限られたプロ」となっていく。

そのクライアントが業績不調で、間接部門の人員削減になった場合、汎用性のないキャリアをもつ彼らに、その矛先が向けられることもあるだろう。

ただし、代理店実務がわかり、事業会社にもいた、ということで、そのあとの引きはかなり多い。かくして、彼らはプロとしてステップアップを繰り返すことになる。

プロとして多社就業による雇用の安定を採るか、幹部候補として一社でキャリアを全うするか。広告業界も、真反対の人生観が入り混じるようなまだら模様となってきた。

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