ハイテクメーカーの逡巡(後編)

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皮肉ないたちごっこの最中にあって、上位メーカーは今、一体どんな心境にあるのだろうか。

※前回の記事「ハイテクメーカーの逡巡(前編)」はこちら。

上位企業のコンセプトメーカー化

こうして80年代に系列外取引と脱自前主義が牧歌的に産声を上げたのだが、90年代はこの様相が一変する。不況と大幅な為替変動、新興国の台頭などで、上位メーカーが構造改革を余儀なくされたからだ。

この時期になると、多くの部品自体は標準化され、それを組み合わせれば、新興国でも日本は圧倒的に安い優位性旧来製品は簡単に作れるようになる。当然、人件費の安さから、価格優位性を保てる韓国製や台湾製のハイテク先端機器、中国製の白物家電などが市場に幅を利かせることになる。もちろん日本メーカーも海外進出して現地生産を試みはした。ただ、これでは価格面でイーブンにはなるが、決定的な勝利要因は見出せない。勝つためには旧来型とは異なる機能、もしくは提案がなければならない。そこで、製造を切り離し、機能設計とコンセプトメイキングに特化する、という経営手法が現れだした。たとえば、任天堂のWiiやアップルのiPodを考えてほしい。取り立ててハイテクに優れた構造ではなく、”体でゲームを楽しむ””音楽を持ち歩く”というコンセプトと機能設計が躍進をもたらせた、と誰もがすぐ納得できるだろう。

上位メーカーが機能設計とコンセプトメイクに専念した結果、切り離された製造工程には、受け皿としてEMS(製造の一貫外注)が90年代後半に台頭をする。ここから分業はさらに進化を遂げていく。経営を身軽にして付加価値を追求する上位企業は、機能設計さえも外注に出し、コンセプトメイキングと製品設計に特化した体制を目指す。ここで、機能設計請負として”ファブレス”が生まれ、彼らが設計した製品を、ファンドリー(製造専門請負=EMSと同じ)が作るようになる。製造工程を持たないファブレスは、かなり身軽で技術力もあるため、不況に強い。逆に、設計部門が不要なファンドリーは、技術力が低い企業でも参入できる。この分業体制には、それぞれの企業にそれぞれのメリットがあり、帳尻が合う形で、進化が続く。

ウルトラ外注の出現

やがて最上位企業は、付加価値の低い普及品に対して、コンセプトメイクさえ外注に出すようになる。そして、上位機種・最新機種の開発に専念するのだ。
では、このフルラインでの丸投げ外注を請け負う企業はどこにあるのか?これは、ファブレスやファンドリーの中の有力企業が、自身の能力をアップするとともに、他工程(ファブレスであればファンドリー、ファンドリーであればファブレス)を買収や提携で、自グループに囲い込み、一貫体制を敷くことにより受け皿となる。この丸投げ外注はODMとと呼ばれる。

これでもまだ打ち止めとはならない。昨今では、メーカーすべてを丸抱えで作り上げてしまう、という究極の外注が生まれて、市場で認知を得始めている。外注は、発注元のメーカーがあってこその外注なのに、メーカー自体を作りあげるというのは本末転倒な話だろう。ところがこれが現実なのだ。一例を出そう。

太陽光発電や燃料電池などは、次世代エネルギーとして参入を狙う企業が多い。たとえば、アラブの大富豪が、”自国でも太陽光発電のメーカーを持てないか”と考えたとする。そのニーズに対して、”製造設備はもちろん、工場ラインも作りますし、場合によっては人も送り込み、設計などの技術指導さえやります”と請け負う会社があるのだ。この分野ではアプライド・マテリアルズが有名だろう。

自動車だとさすがに工程が多岐に渡っているため、ひとつの会社で全部、とはいかないが、電装関連全般とか、ボディ・車台部トータル、といった工程をくみ上げる外注が存在する。前者であれば代表的なものとしてマグナ・インターナショナルがある。面白いところでは、大生機械という会社が、もやしの栽培・加工ライン作りを一貫で請け負う事業などもやっている。これらの”メーカーを作っちゃいます”サービスを称してフルターンキーと呼ぶ。

上位メーカーに残ったものは?

上位メーカーは身軽になって付加価値を追い求め、サプライヤーは次第に技術を身につけ横展開していく。その最終形がフルターンキーとなり、彼らが発展途上国で新たなメーカーを生み出し、結果、上位メーカーはますます先端分野に追いやられる。皮肉ないたちごっこの最中にあって、上位メーカーは今、一体どんな心境にあるのだろうか。選択と集中という”身軽な経営”が体現でき、競争優位性がより高くなったと納得しているのか?それとも、昨日の友は今日の敵と百鬼夜行を憂い、古き良き日本型経営を懐かしんでいるのだろうか。

外注分業体制の進化

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